咬みあわせと身体の意外な関係
一見、何が原因かわからない「不定愁訴(原因がわからないけれどなんとなく体の調子が悪い状態)」と呼ばれる症状。
実は、咬み合わせの悪さが引き起こしていたという場合も多いのです。また、咬み合わせが体に与える影響はさまざまなものがあるようです。
以下に咬み合わせと体の意外な関係について見てみましょう。
胃腸障害
良く咬むということは、胃腸の消化を助けるという重要な働きがあります。
咬み合わせが悪いと、咬む回数が極端に減り、唾液の分泌が減ってしまいます。
食べた物は、歯で細かく咬み砕かれて唾液と混ざりあうことで胃腸で消化されますので、咬む回数が少ないと胃腸への負担が増えてしまうのです。
また、唾液が出ると、神経回路を通じて胃液を分泌するように命令がでます。
これが、咬む回数が少なくなると唾液と胃液という消化のために重要な体液が少なくなるため胃腸への負担が大きなものになるのです。
肥満になることも
人間の満腹感は、脳が血液中の糖分を感知し、満腹中枢に知らせることで抑制しています。
良く咬まずに早食いをしていると、血液中の糖分が満腹中枢を刺激する前に必要以上の食べ物を食べてしまい、満腹中枢が刺激された頃には既に過食状態になっています。
また、咬み合わせが悪いと、顎がすぐに疲れるため、知らず知らずのうちに良く咬まなくても食べられるようなものを好んで食べるようになります。
その結果、肥満体質になってしまうのです。
できるだけ、咬む回数の多い硬いものを食べさせ、栄養バランスのとれた食事をとることが大事です。
正しい咬みあわせで顔のバランスが良くなる
正しい咬み合わせで行う、咬む運動は、顔のバランスをよくします。
咬み合わせが悪く、いつも同じところで咬んでいたり、片側だけで咬んでいると、顔の左右のバランスがくずれてきます。
咬む行為は、顎の骨や筋肉の発達を促す大きな作用がありますので、虫歯、または咬み合わせの悪さが原因で片側だけで咬んでいたりすると、顎の骨や筋肉が片側だけ発達し、左右のバランスがくずれてしまうのです。
日ごろからできるだけ両側でバランスよく咬む習慣をつけましょう。
咬むと頭が良くなる
脳にとって、実は、咬む行為はとても重要な働きをしています。
咬むことによって生じる脳への適度な刺激と筋肉の活動による感覚受容器からの感覚情報が脳を刺激し、脳の活動を活発にしています。
咬む運動と大脳の活発な活動によって血液の循環がよくなり、新鮮な血液が大脳の働きをさらによくするのです。
頭部においては咬む行為が唯一の運動です。
全身の運動や、咬む行為をしているときは、眠くなりませんよね。
それはつまり、咬む運動をすることで大脳を活性化し、記憶力、思考力、判断力、注意力などを高め、大脳の機能を著しく活発にしているからなのです。
咬む運動は、お子様だけではなく、老化のボケ予防にもいいと言われています。
集中力とストレス
咬み合わせと集中力やストレスには大きな関係があります。
咬み合わせが悪いと集中力不足やストレスによって全身のバランスが崩れてしまい体の不調を引き起こすことがあります。
肩こり、頭痛、めまい、耳鳴り、冷え性など咬み合わせのストレスからくる不調はさまざまです。
また、咬み合わせの悪い人は、花粉症やアトピーなどのアレルギー体質の割合が高いともいわれています。
アレルギーの直接の原因は身体の免疫細胞の過剰反応と言われていますが、ストレスも大きな要因の一つとして考えられています。
咬み合わせの悪さは無意識のうちに身体にストレスをためこむため、こういったアレルギー症状にも悪影響を与えていることがあるようです。
このように身体の内側から生まれるストレスは、なんらかの形でサインとして身体の症状や行動に表れてきます。
咬み合わせとスポーツの関係
歯の咬み合わせとスポーツパフォーマンスの関係はあまり認知されていないように思います。
歯の咬み合わせが悪いということは、スポーツにおいてどんな影響を及ぼすでしょうか。
まず、咬む力(咬合力)が減り、あらゆる運動能力が低下します。歯のバランスが悪いと、重心動揺が大きくなりバランス感覚が悪くなります。
また、マウスピースを装着することで怪我の予防や筋力UP、バランス感覚の向上などの研究報告もあります。
つまり、歯の咬み合わせや歯の健康管理は、アスリートの命であるバランス感覚や運動能力そのものに密接に関連しているということです。
咬みあわせが悪くなる原因
歯は直接、骨とくっついていないのはご存知でしょうか?
実は、歯は骨との間に歯根膜というものがあり、これがクッションとなって歯ごたえのある物を食べても脳に衝撃がいかないようになっています。
歯は咬んだ時、垂直、水平、前後3次元に動いています。
さらに大事な事は、一本一本の歯の歯根膜の中に素晴らしい感覚受容器(センサー)が入っているということです。
歯は食べたり、しゃべったりするだけでなく、咬んだ刺激(気持ち良い、気持ち悪い)をセンサーが瞬時に感じ取って脳に伝達する役目を持っています。
更に瞬時に脳からその刺激が心身の各部に伝達され、何らかの不調を及ぼすこともあります。
また、ストレスやケガなど、心身に異常(不調)があれば、そのイヤな刺激が脳に伝達され、脳から歯へと伝達され、歯が身を挺して、痛みや腫れなどの症状で我々に健康の見直しの注意を促し、メッセンジャーとしての大きな役目を果たしています。
それでは、咬み合わせが悪くなる原因を紹介します。
1:誤った食生活から
吸引抵抗の少ない哺乳瓶があごの骨格、筋肉の発達を遅らせます。
そのため硬いものを食べるのを嫌がり軟らかくて歯に付き易い食べ物が多くなるので虫歯になり易くなります。
更にあごが十分に発達しないため特に奥の方が狭くなり、通常の大きさの永久歯が出てきてもスペースが足りずに叢生(歯列の乱れ)、出っ歯、受け口などの歯並びとなります。
2:虫歯や抜けた歯の放置から
虫歯や抜けた歯を放置しておくと、それに咬み合う歯がせり出してきて上下の咬合が悪くなります。
また、抜けた両隣の歯は支えを失って抜けた側に傾いていきます。
そしてスクラムを組んでいた歯がバラバラになり易くなります。
4:歯科治療が原因で起こる「歯原病」から
歯列矯正や歯冠修復、補てつなどの歯科治療によって見た目は確かに良くなっていても咬み合わせは前よりも悪くなっていることがしばしばあります。
現在の歯科の現状は良くても歪んだ咬み合わせ(習慣性咬合)のまま治療しているということになります。
5:過度のストレスから
失恋、失業、人間関係、仕事、受験、筋力トレーニングなど苦痛を感じたり過度のストレスにさらされ続けると、脳から歯に伝達されて咬み締めや食いしばり、歯ぎしりを起こします。 それが一部の歯や時には全ての歯に負担をかけて歯が浮いたりしみやすくなったりします。