産前産後と歯科

「一子を得ると一歯を失う」ということわざがあるくらい妊娠中は歯や歯肉の病気にかかりやすくなります。
というのは妊娠中は
・唾液が減る
・虫歯の原因になりやすい甘いものや酸っぱいものが食べやすくなる
・つわりで歯磨きがしにくくなる
・食欲が出て、虫歯になりやすくなる
・妊娠中は歯周病菌のエサになる女性ホルモンが7倍も増える
・歯周病になりやすい30代の妊娠が多い

という原因があるのです。
そのため妊活をはじめたら、歯の治療に対して注意すべき点がでてきます。

妊活時から出産後まで全般

早産のリスクを上げる歯周病は早めに治す

歯周病をもっていると早産や低体重児を出産する確率が高くなるという研究結果がでています。
北海道医療大学による調査では、歯周病の妊婦はそうでない妊婦に比べて5倍も早産になりやすかったという結果が出ています。
海外の研究結果でも7倍も早産や低体重児のリスクが高まるという報告があります。
妊活をはじめようと思ったらなら元気な赤ちゃんを生むためにもまずは歯医者に行き、口腔の病気をしっかりと治しましょう。

X線治療や麻酔は妊娠中期以降に

歯科で使われるX線はごくわずかですし、麻酔はごく少量で局所なのでほとんど胎児には影響はありませんが、万全を期すなら歯科治療は安定した妊娠中期以降に行うべきです。
薬の使用も中期以降にするのが好ましいでしょう。

妊娠初期(~3ヵ月)

妊娠初期の胎児は麻酔やレントゲンなどの影響を大きく受けます。
そのため、妊娠初期はなるべく応急処置でしのいで妊娠中期になってから治療をしたほうがベターです。
つわりなどで歯磨きをするのが困難になる場合もあり、ホルモンバランスの崩れも相まみえて、歯周病にもなりやすくなります。
歯周病になると胎児へのリスクが高まりますので、歯が磨けない場合でもデンタルリンスなどを使って口の中のケアはなるべくしっかりするようにしましょう。

妊娠中期(4~7ヵ月)

妊娠中期は妊婦さんが歯の治療を受けるのに最も適した時期です。
麻酔やレントゲンが必要な治療から抜歯までほとんどの歯科治療をうけることができます。
産婦人科と連携がとれる歯科であれば、妊婦さんの情報をシェアしたり、胎児への影響が少ない治療を選択することも可能になるので、相談してみましょう。

妊娠性エプーリス

妊娠中期頃に歯茎に良性の腫瘍ができることがあります。この腫瘍を妊娠性エプーリスといいます。
赤く、出血しやすいできものですが、出産とともに無くなる場合が多いです。
妊娠性エプーリスの原因は女性ホルモンの変化と刺激と感染によるものだと考えられています。

妊娠後期(8ヵ月~)

お腹が大きくなってくると、仰向けの姿勢をとるのが難しくなることがあります。
身体への負担が大きくなるため、早産のリスクが増すこともあります。
この心配さえを除けば、妊娠中期と同じように治療に伴う胎児への影響を心配する必要はほぼありません。
妊娠後期の歯科治療は身体的な負担が大きくなりやすいため、虫歯がないように思えても、なるべく妊娠中期にお口の中も健診を受けて、早めの治療を心がけましょう。

授乳中

授乳中の歯の治療でよく心配されるのが、飲み薬です。
しかし、授乳を影響がでるような種類の薬は、歯科では処方されないため安心してください。薬のために授乳を中断することは、デメリットがあります。
もしも、授乳を中断するように言われたら、授乳しながら出来る他の治療方法がないかどうか医師と相談してみましょう。

離乳食をはじめたら

離乳食を食べ始めたら、一番注意してほしいことは親の口内菌を子供に移さないようにすることです。
生まれたばかりの赤ちゃんの口の中は細菌が存在しないのですが、その後いろんな菌が口の中にはいってきます。
その菌を少しでも入らせないようにするために、
・同じスプーンや箸、コップを使わないようにする
・口移しで食べさせない
・キスをしない

といったことは最低限気をつけるべきです。
特に18ヶ月から36ヶ月までは虫歯菌が非常に感染しやすい時期なので、特に注意が必要です。
4歳までに虫歯菌感染を防ぐことができたら虫歯になる確率は15分の1になるという研究結果があります。
ただし虫歯菌は「一度でも口移ししたらダメ」といったわけではありません。実際に虫歯になるかどうかはその後の歯磨きや、糖分摂取の仕方なども大きく関係してくるためです。
あまり神経質にはならず、なるべく口内菌を移さないように気をつけましょう。

診療予約